一週間で3度の雪。これが本来の冬なのね。

麻布十番は僕にとって近くて遠い街。
曇り空の下、かれこれ10年ぶりのご挨拶。大事な人の墓参り。
門をくぐり、坂を上り、境内を見遣ると、鮮明なまでに蘇る記憶。
迷うことなく彼女の墓石に辿り着いてしまう。
墓石を磨き、線香を手向け、何とはなしに話をする。
21歳だった僕と24歳だった彼女は、今、33歳の僕と24歳の彼女。
今のこと。
これからのこと。
何とはなしに話をする。
もしも、とか、だったら、とかはもう思わないけど、
こんな風に話せることが何だか嬉しい。
そうだ、こんな風に話したかったんだ、ずっと。